こんなお悩みを解決します。
この記事では絵本の内容だけでなく、対象年齢や文字の分量についてもまとめているので、おばけや妖怪の絵本を探している保育園や幼稚園の先生にぴったりです。
16年の保育士経験の中で、何十人の子どもたちに読み聞かせをしてきたおばけや妖怪の絵本を紹介しています。
- 保育歴16年の保育士
- 0歳から5歳まですべて経験
- 小さい頃から図書館が大好き
- 保育歴16年の保育士
- 0歳から5歳まですべて経験
- 小さい頃から図書館が大好き
記事の前半では乳児クラスで読めておばけごっこなどを楽しめる絵本を、後半では幼児クラスでドキドキわいわい楽しめる、ちょっと怖いおばけ・妖怪の絵本をまとめています。
「みんなでおばけに変身して遊びたい」「おばけや妖怪の絵本をクラスで楽しみたい」と思っている保育士さんや幼稚園の先生はぜひご覧ください。
✅ 絵本の紹介ポイント
- 【年齢】読み聞かせやすい年齢
- 【文字量】文字の多さ
(少ないーふつうー多い) - 【特徴】絵本の特徴まとめ
絵本のタイトルの横には、その絵本のテーマも抜き出しています。
「食べ物」「変身」「遠足」「昔話」などのテーマからも絵本を探せますので、あわせてチェックしてください。
友だちになりたくなるカワイイおばけ絵本
ばけばけばけばけ ばけたくん(おばけ×食べ物×変身×シンプル×カラフル×人気)
【年齢】1歳・2歳・3歳・4歳・5歳児クラス
【文字量】少ない
【特徴】なにかをたべて変身するごっこあそびが楽しめる(想像力も高まる)
内容をさくっというと、【おばけのばけたくんがおいしいものをつまみ食いすると、体がたべたものの色や形になっちゃう】というお話。
この絵本、とっても面白いです!
面白さのポイントは2つあります。
1つは【変身】。かんたんにまとめるとこんな感じです。
① ばけたくんの白い体がカラフルに変身する
- ペロペロキャンディの模様になったり、つぶつぶのあるまっかなイチゴの色になったり、頭からキノコがはえたりと、ページをめくるごとに大変身する。
- 色だけじゃなく形も変わる。そのバリエーションが豊富で面白いので、子どもたちは「こんどはどんなふうに変わるのかな?」とワクワクドキドキする。
② 変身してもその前の要素がちょっと残ってるのが子どものツボ
「あっ、手としっぽだけまだイチゴだ!」「ふふっ、しっぽにキノコが残ってるね」などと、子どもが“面白いものをみつけたぞ”と発見を楽しめる。
③ 【たべる】→【変身】が繰り返される
シンプルだけど先が気になる展開と、色や形が視覚にダイレクトに飛びこんでくるこの絵本は、1歳児クラスから楽しめます。
文章も1・2歳児が楽しめる短さでテンポよく進むので、絵本の面白さがストレートに伝わります。
だからこの本、子どもに大人気なのです!
わが家の年長の息子も、この記事をわたしが書いているときに『ばけたくん』を手に取り、「これ面白いよね~」と読みなおしていました。
ここまで年齢を問わずに楽しめる絵本って貴重ですよね。
この絵本を魅力的にしているもう1つのポイントは、【色のきれいさ】です。
カラフルなペロペロキャンディーやイチゴの赤、色とりどりのキノコ、オレンジのスパゲティ、そして、緑のメロンソーダ。
背景が黒ベースの絵本のなかで、白いおばけの色がリズミカルに変わっていきます。
子どもに色のきれいさや楽しさを肌で感じてもらえる1冊ですよ。
おばけのやだもん(おばけ×おばけになっちゃう×やだやだ期×身近な生活×おばけと友だち)
【年齢】2歳・3歳・4歳・5歳児クラス
【文字量】ふつう
【特徴】“やだもんごっこ”をすることで、子どもと楽しくやだやだ期をすごせる
おばけの”やだもん”は、「やだやだ」いっている子がいると”べろーん”となめておばけにしてしまいます。
そして、おばけになった子は“やだもん”そっくりになって、仲間を増やしに子どもを探しに行くのです。
ここまで聞くと、せなけいこさんの『ねないこ だれだ』を思い出しますね。でも、1つだけちがうのは、 おばけになることが楽しそうなのです。
おばけになると、「わぁ~、おばけになっちゃったよ。やだよー」ではなく、「ふっふっふ、ぼくはおばけだぞ~。どこかにやだやだいう子はいないかな?」というおばけの思考になるっぽいのです。
顔が“やだもん”そっくりになって、ニヤッと笑っているのがその証拠です。
これを読んだら、子どもたちはきっと“やだもんごっこ”をしたくなります。
担任が「ぼくは“やだもん”だよ~。どこかにやだやだいう子はいないかなぁ?」などと投げかければ、
「あ~、いやだなぁ~」などと、子どもはまちがいなく乗ってきます。
やだやだいう → なめられる → おばけになる → 子どもを探す
というごっこあそびのイメージが、絵本から子どもたちの中にパッと入っているので、すぐにあそべちゃいますよね。
しかも、この絵本。
話の後半で、やだもんのことをさらに好きになってしまう展開がまっているのです。
ざっくりとまとめるとこんな感じ。
- ある女の子がおばけになりたくないので、「やだやだ」いうのをやめていい子になりました。
- すると、“やだもん”はおばけパワーがなくなって小さくなってしまいます。
- それまでイヤがっていた女の子は急に“やだもん”がかわいそうになって、やさしくギュッとだきしめます。
そんなシーンでの言葉。
さっちゃんは、やだもんが かわいそうになって ママが やってくれるみたいに
やさしく ぎゅ~っと したよ
『おばけのやだもん』著・ひらのゆきこ
それまでの“やだやだ話”や“おばけ変身話”から、“心あたたまる話”に切り替わる瞬間です。
特に“ママがやってくれるみたいに”というフレーズが、見ている子どもたちの心に刺さります。
子どもは大好きなママのことや、ママにぎゅっとされる安心感を思い出し、物語の中の女の子を自分のことのようにとらえるでしょう。
そして、その後のおばけと友だちになるシーンに嬉しさを感じ、子どもたちは“やだもん”のことが大好きになります。
2歳児や3歳児クラスでは、「着替えがやだ」「トイレはやだ」ということが毎日ありますよね。
そんなときに、
「おっ、こんなところにやだやだいう子がいたぞ!うれしいなぁ」
「ぼくがぺろりとなめておばけの仲間にしてあげよう」などと声をかけてみてください。
「いやだ!」と固まっていた子どもの気持ちが”やだもん”のイメージでほぐれていき、次の行動に切り替わるきっかけにできると思います。
『おばけのやだもん』は“やだやだ期”を楽しく乗りこえる手助けをしてくれる絵本です。
カババスえん おばけとえんそく(おばけ×バス×幼稚園×どうぶつ×友だち×遠足)
【年齢】2歳・3歳・4歳・5歳児クラス
【文字量】ふつう
【特徴】“おばけ”と“えんそく”という2つのテーマが子どもをわくわくさせる
“遠足”というだけで子どもたちは楽しいのに、そこに“おばけ”が加わるものだから、わくわくはぐっと高まります。
- ストーリーを簡単にまとめると、“カババスえん”はバスの幼稚園で、運転手はカバ園長。
- うさぎやたぬきの子どもたちをバスに乗せて、遠足に出かけます。
- その途中でおばけたちと出会い友だちになり一緒に遠足を楽しむ、という王道的な内容です。
この絵本で子どもたちの興味をひくのが、おばけたちの特技です。
・ 一つ目小僧 → 目玉を光らせてバスの行く手を照らす
・ からかさ小僧 → バスの上で回転して、ヘリコプターのようにバスを飛ばす
・ ゆきおんな → 涼しい息を吹きかけてバスのクーラー役になる
・ ろくろっくび → 自分の首を大なわにして子どもたちを楽しませる
「わぁ、おばけってこんなことできるんだ!」という驚きと共に、
「ちょっとこわいかも…」と思っていたおばけと仲良くなれる展開は、子どもたちにとって嬉しいシーンです。
絵本の後には”妖怪バスごっこ”も楽しめます。
「妖怪バス乗ってみたいよね。保育園にはどこかにバスにできる場所はなかったっけ?」などと投げかければ、子どもたちはあっという間にあそびの場所を見つけます。
絵本のイメージを元に、子どもたちがどのようにあそびを広げていくかが楽しみですね。
子どもの好きな要素がたくさん入っており、単純に“楽しい”1冊になっています。
おばけとモモちゃん(おばけ×おばけを買う×ちいさいモモちゃんシリーズ)
【年齢】2歳・3歳・4歳・5歳児クラス
【文字量】ふつう
【特徴】おばけやさんごっこやかいものごっこがしたくなる内容
1964年に出版された絵本の新装版で、『ちいさいモモちゃん』シリーズの1冊となります。
あらすじをかんたんに書くとこんな感じです。
- モモちゃんはTVで見たおばけがほしくなり、10円玉をにぎりしめておばけを買いに行く
- おもちゃ屋さんでも動物屋さんでもおばけは売っておらず、着いたところは“おばけやさん”
- モモちゃんは本物のおばけに怖がることなく、おばけさえも困ってしまうほど
- とうとうモモちゃんはお気に入りのおばけを見つけて、10円玉で買ってしまうのです
これだけみるとたいしたことないように感じるかもしれません。
でも、50年以上読み継がれているには理由があります。
それは、この絵本には【子ども心】がたくさんつまっているからです。
「おばけを買いたい」という素敵な発想。
「おばけやさんなんてあるの!?」という驚き。
「おばけなんて怖くなくて、逆におばけが困ってしまう」という面白さ。
この絵本を読むと子どもたちは【おばけやさんごっこ】【おみせやさんごっこ】に興味がでます。
「いらっしゃーい、おばけやさんですよ~」などと保育者が声をかければ、子どもたちはすぐにモモちゃんになって【ごっこの世界】に飛び込んできますよ。
ぜひ、子どもたちと楽しんでみてください!
2歳児クラスの後半から4歳児クラスくらいで楽しめる内容です。
「あっ、これは怖そう」と子どもがわくわくするおばけの絵本
4歳児・5歳児クラスになると、怖い話が好きになってきます。
そんな子どもたちが楽しめる絵本をご紹介します。
鬼のかいぎ(妖怪×昔話×インパクトのある絵×自然を大切にする心を養う)
“自然との共生”がテーマの絵本。
【年齢】5歳児クラス
【文字量】多い
【特徴】「自然を守りたい」という気持ちを子ども自身で発見できる
テーマがむずかしく聞こるかもですが、子どもたちは【妖怪話】にワクワクドキドキする中で、「自然を大事にしたい」と自ずと感じられる内容になっています。
やや長いのですが、昔話のように語られるストーリーと、怖さの中にもかわいさがある妖怪たちのおかげで、わたしの年長クラスの子どもたちもよ~く集中して見ていました。
内容はこんな感じ。
- 平安時代と思われる頃、人間たちは木を切るなど自然を破壊していた
- それに怒った百鬼(妖怪)たちは様々な手段で訴えるが、人間たちにはその声が届かない
- 人間と争うのではなく、人間にわかってもらおうと訴えつづけることを百鬼は選ぶ
- ようやく人間も気づき、切ってしまった木の魂をなぐさめるお払いをする
- そして、話は一気に現代へ!
- こりない人間はまた自然を破壊している
- 百鬼は今でも人間に訴えているが「いつまで百鬼は我慢をしてくれるのでしょうか?」
このラストが『鬼のかいぎ』の最大の特徴です。
「人間は木を切って、水を汚してよくないなぁ」
「百鬼がかわいそうだなぁ」
「最後はちゃんと人間が謝ってよかった」
などと、絵本の中のことと思って見ていた子どもたちの胸元に、
「いいえ、これは絵本の中のことではないのですよ!あなたたちの今の話なのですよ!」と百鬼が訴えてくるのです。
子どもたちにとってこれは衝撃です。
そして、物語を通して木や水の大切さや百鬼の一生懸命さがわかった子どもたちは、“じゃあどうしたらいいのかな”と考えることができるのです。
わたしのクラスの年長の子どもたちは「木を大事にしようよ」と声をあげました。
そこで「みんなのまわりに木はどこにある?」とわたしが投げかけると、
「あっ、ぼくたちのイスは木でできてるよ!」
「おはしも木だよね」
「紙も木でできてるって聞いたことがある」などと意見が出ました。
「じゃあ、どうしたら木を大事にできるかな?」と聞くと、
「紙の裏にも描く」
「ポイって捨てない」
「紙にいっぱい描く」
などと、子どもたちみんなで考える活動につながりました。
これはわたしのクラスの1例ですが、子どもたちと身近な環境保護について話し合うことができました。
『鬼のかいぎ』は説教臭い感じはなく、物語に入り込み百鬼に共感することで、自ずと「自然を大切にしたい」と感じる絵本になっています。
おばけおばけおばけ(おばけ×子ども×いたずら×家の中×留守番×モノのおばけ)
【年齢】3・4・5歳児クラス
【文字量】ふつう
【特徴】怖さと面白さの絶妙なバランス。“もっと怖いの読みたい!”という子どもたちの気持ちを満たしてくれる1冊。
非常にシンプルな絵本です。
文字も少ないので、テンポよくページは進んでいきます。
内容はというとこんな感じ。
お母さんは出かけて、お父さんは昼寝中。
今がチャンスと留守番中の男の子はティッシュをムダに出したり、冷蔵庫を開けたりといたずらばかりしています。
すると、ティッシュや冷蔵庫などがおばけに変身して子どもを驚かせる…という内容です。
この絵本の最大の特徴は“絵”です。
けっこう怖さもある絵なのですが、かわいげもあってユーモラスなおばけも出てきます。
そんなおばけが1ページごとにわんさか登場。
家の中のすべてのモノがおばけになっているのですが、そのバリエーションの多さにはびっくりします!
おはしやスプーン、フォークがおばけになったり、冷蔵庫の中身全部がおばけになったり、しょうじの穴から100個くらい目が出てきたり…。
おばけのオンパレードに、子どもたちは「次はいったい何が出てくるのかな?」とドキドキワクワクして目が離せなくなるのです。
そして、物語のラスト。ようやくお母さんが帰ってきます。
見ている子どもたちもホッとする瞬間でしょう…。
しかし、ここでまさかのおばけが登場!
大人にとってはどこかで見たことのあるラストシーンですが、子どもたちにとっては衝撃的だと思います。
年長クラスで読んだときは、このラストに水を打ったような静けさになってしまいました。
もちろん、“ものすごく怖い”というところまではいかないのですが、「こ、こわくなかったよ」と強がるくらいにはなるかもしれません(笑
「もっと怖いのが読みたい!」と強がれる4歳くらいからおすすめの絵本ですよ。
ぞくぞくぞぞぞ(化け物×江戸×本物×擬音×絵巻物)
【年齢】4・5歳児クラス
【文字量】少ない
【特徴】江戸時代の絵巻物という“本物”を、絵本という形で感受性豊かな子どもたちに見せることができる
この絵本は、江戸時代の絵巻物『化物絵巻』(作・狩野宗信)から化け物の絵を抜き出して作られています。
- ストーリーは特にない
- 江戸時代の絵師の本物の絵で、キツネやタヌキ、ぞっとするような化け物まで描かれている
- “ぞくぞく”や“ぞぞぞ”、“かさこそ”などの擬音が絵にあてられている
- 日本の昔話のようなどこか不可思議な世界、どこかぞっとするような世界が広がっている
“読む”というより、本物を“見る・味わう”といったほうがピッタリな絵本です。
子どもはむずかしいことや複雑なことは得意ではありませんが、ものごとの本質をパッとつかむのは得意です。
そんな子どもたちが、江戸の絵師が技術の限りを尽くして描いたこの絵を見たら、いったいどのように感じるでしょうか?
わが家の年長の息子はこの表紙が怖かったのでしょう、「この絵本を遠くにおいて!」とすぐに言っていました。
絵本としては色や絵に派手さはなく、繊細でシンプルな内容。
だから、子どもが絵をじっくりと見られる環境で読み聞かせるのがベストです。
ちなみに、あの妖怪博士・水木しげる氏が推薦しているという筋金入りの本で、本物づくしの1冊となっています。
妖怪好きな人におすすめです!
火 あやかし(山の気配×あやかし×妖怪×時代物)
【年齢】4・5歳児クラス
【文字量】ふつう
【特徴】あっという間に物語の中に吸い込まれ、暗くあやしい山の気配を肌に感じるられる絵本。「怖い本が見たい」という4・5歳児向き。
やや大きいサイズの表紙の中で燃える大きな炎。そして、『火 あやかし』というタイトル。
「いったいどんな絵本なんだろう?」と思わず手に取ってしまうほど、何やらあやしげな雰囲気を発しています。
表紙をめくるとその裏に、
昔から人は山に入るとよくあやしいものに出会ったという
出典:『火 あやかし』著・飯野和好
と書いてあり、妖怪好きなわたしは「おぉ、これはあやしいぞ。ちょっと怖い感じもして面白そう!」とページを進めます。
ストーリーはこんな感じ。
- 登場人物は2人の兄弟
- 舞台は京の都から丹後へ向かう夜の山道で、江戸時代あたりのこと
- 兄弟が夜の山道を歩いているとだれかが残したたき火を発見
- 火をおこして休んでうつらうつらしていると、山に住んでいるあやしげな気配がぬわぬわと近づいてくる
この絵本の最大の特徴は、山のあやかしたちの気味の悪さです。
大人でも思わずぞっとしてしまうほどで、以前読んだ漫画『ベルセルク』の敵を思い出しました。(わからなかったらすみません)
絵本に出てくるあやかしは昆虫がベースになっているのですが、そこに山の瘴気が加わったのか、巨大化+怖さが虫に加わっています。
しかも、この絵本自体が大きいサイズなので、あやかしたちは圧倒的な大きさで迫ってきます。
「ひえぇ~」と思いながらも、「だからこの絵本はこの大きさなんだ」と妙に納得。
大人でも圧倒されてしまうので、子どもにとってはなおさらですよね。
読み終わると作者のあとがきがありました。
作者は秩父の山奥で育ち、半酪半農+炭焼きの暮らしで、囲炉裏(いろり)や竈(かまど)などをつかって生活。燃料となる薪(まき)を取りにいくのは子どもの仕事で、山によく入っていたそうです。
だからこの絵本からは山の気配がするのだなと、またしても納得しました。
山の気配や怖さを知っている人が描いた、山のあやかしの絵本。
それがこの『火 あやかし』なのでした。
ぜひ、ご一読をおすすめします。
おんみょうじ 鬼のおっぺけぽー(妖怪×百鬼夜行×擬音×陰陽師×平安時代)
【年齢】4・5歳児クラス
【文字量】ふつう
【特徴】いっけん怖くなさそうだけど、実はじんわり怖くなる平安時代の昔ばなし。日本、和風、妖怪というイメージを子どもと共有できる。
“おんみょうじ”というタイトルで、作者はあの夢枕獏さん。(絵は大島妙子さん)
わたしはこの絵本を見た時、「あぁ、陰陽師の人か。絵本も出してるんだなぁ、へぇ~」と思っただけで、すぐには手が出ませんでした。
たぶんそれは、タイトルにある【おっぺけぽー】に力がぬけたのと、“陰陽師”や“平安時代”というかなり限定された内容と保育が自分の中でつながらなかったからです。
しかし、他に類を見ないタイトルが気になってしまい、本棚から絵本を取り出し表紙を見てみました。
すると、おそらく陰陽師・安倍晴明であろう白い顔をした子どものドアップと、これまた何とも言えない妖怪たちの絵に心をつかまれ、ページを開くことになりました。
ストーリーはこんな感じ。
- 子どもの陰陽師である“安倍晴明”が牛車をひいて夜中の平安京を歩いていると、鬼のむれがやってきて食われそうになる
- 晴明やそのお師匠さんが不思議な術をつかって鬼たちを退治する
この絵本の1番の特徴は、鬼たちの怖さです。
絵だけ見るとおどろおどろしいわけでもなく、特別怖いわけではありません。
むしろ、これはほめ言葉としてあえて書きますが、子どもの落書きのような鬼がたくさんでてきます。
それでいて、怖い。
それは、この鬼たちが、とぼけた顔や半笑いの顔、変な顔、落書きのような顔をしながら、人を喰うために夜中歩き回っているからだと思います。
それも、「おっぺけぽー」や「のっぺけぽー」などと、力の抜けるような言葉を発しながら…。
作中では、鳴き声を上げてしまった牛が鬼たちに食われてしまいます。
怖いような怖くないような何とも言えない鬼たちが、牛にむらがってがりがりむしゃむしゃ食べるシーン。
昔ばなしに出てくるような絵で表現されているからか、残酷さのようなものはないように感じます。
ただ、じんわりと怖さが広がります。
「鬼たちは落書きみたいな顔して、どこかかわいらしさもあるのに、やっぱり食べるんだ…」と。
そして、その鬼たちが安倍晴明たちを探してかぎまわるシーンがやはり怖い!
大人でもこのように感じるので、感受性の強い子どもたちはさらに怖く感じるように思います。
派手な怖さはないですが、じんわりと、ぞっとするような日本の昔ばなしはいかがでしょうか?
おろろん おろろん(おばけ×百鬼夜行×擬音×かわいさと怖さの絶妙バランス×親子の愛情)
【年齢】3・4・5歳児クラス
【文字量】ふつう
【特徴】ポップなおばけと絵巻物から抜け出たような本格的なおばけがでてくる、かわいさと怖さのバランスが絶妙な1冊。
先ほどご紹介した『おんみょうじ 鬼のおっぺけぽー』と同じように“百鬼夜行”や“擬音”などがテーマにありますが、中身はだいぶ違います。
表紙にはポップな絵柄のおばけ3びきと『おろろん おろろん』というタイトル。
何やらかわいいおばけたちによる楽しげな雰囲気が出ています。
しかし、ページをめくると、右手には不穏な気配がするまっ黒な月とあやしげな雲。
左手には、おばけが出そうな平安調のボロ屋敷に、人型だけど明らかに人外の者と思われるお母さんとお付きの者、そして娘が登場します。
ここの雰囲気がなんとも不気味で、じんわり怖いのです。
表紙がポップでキュートだっただけに、この落差に子どもは驚くと思います。
ストーリーはこんな感じ。
- “おろろん”と呼ばれるおばけの行列(百鬼夜行)にお母さんたちが参加する
- 大人だけのものなので、残念ながらおばけの子どもたちはお留守番
- そこで、子どもおばけたちだけで集まって“おろろん”をやり始める
- 最初は楽しく大盛りあがりだけど、道に迷って泣きそうになっていると向こうから何かがやってきて…
この絵本の最大の特徴は、イラストレーター・絵本作家であり、自称“絵描き”である、石黒亜矢子さんの絵にあると思います。
古典的な日本のおばけの怖さと、現代的なポップ感やキャラ的なかわいさのあるおばけが、
みごとに合体しているのが、この絵本の面白さだと思います。
子どものおばけたちは本当にかわいく、一匹いっぴきが何かのキャラクターのようです。
それでいて、絵本全体に流れる雰囲気や背景、大人のおばけたちは本物の絵巻物のような絵で怖さがあります。
この対比が絵本の特徴であり、そこに“おろろん”という不可思議な擬音とともに、おばけたちが楽しそうに列になって歩く“百鬼夜行”が加わることで物語となっています。
物語の最後は、親子が無事に出会うハッピーエンド。
“おばけの親子”を描いたストーリーでもあるので、子どもたちもほっこりとした気持ちになれるおばけ絵本です。
さいごに
子どもの大好きなおばけの絵本。
これ以外にもまだまだたくさんあります。
これからもいい絵本を見つけたらどんどん紹介してきますね。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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