集まりの4つの意味
① 活動の切り替え
② 楽しいあそび(紙芝居・絵本・手あそび・歌など)
③ その日の予定を知り、見通しを持って生活する
④ “聞く・話す・考える”の練習
ここに4つの意味をあげましたが、“そんなことはわかってるよ”という方も大勢いらっしゃると思います。
それでもこの記事を書いたのは、10数年保育士として働いてきて“集まり”の大切さを痛感しているからです。
特に、ここ数年の幼児クラス担任の実践を通して、“集まり”には子どもの主体性を引き出す大きな力があることがわかったからです。
そのために、保育園や幼稚園で行われる“集まり”について、実際の経験からわかったことを私なりにまとめていきます。
若手職員には“集まり”の基本的な考え方がわかるような記事にしたい。
そして、中堅以上の方々にも、今求められている“子どもの主体性”の参考になればいいなと思っています。
それではスタートします。
*“集まり”で実際にどんなことを話しているのかもまとめています。具体的な内容とそのねらいをまとめた記事はこちらからどうぞ。
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集まりは子どもの気持ちを切り替える

TanteTati / Pixabay
ポイント
あそびや活動の間に集まりを入れると、子どもたちの気持ちが切り替わる
落ち着いて室内あそびをしていても、一定の時間が過ぎると子どもの集中は途切れていきます。
そして、走りまわったり、たたかいごっこを始めたり、ということがよくありますよね。
また、いつもと違う場所でのあそびやホールでの体操などをすると、環境の変化から子どもたちが興奮することもあります。
そんな時に “集まり”をするのです。
片づけたり、座って話を聞くことで、気持ちを切り替えることができるからです。
そうすることで、次の活動にスムーズに移ることができます。
ただ、“集まり”をするということは、子どもたちのあそびや気持ちをそこで終わりにするということでもあります。
乳児クラスであれば、「ちょうどあそびが盛り上がってきたから、もう少し集まりをしないでおこう」ということもあるでしょう。
同じような状況でも4・5歳児クラスならば、「もう少し遊びたい?」「じゃあ時計の長い針がどこになったら片づける?」などと子どもと一緒に考えることもあるでしょう。
大人がすべてカチッと決めてしまうのではなく、子どもの姿を見て、気持ちを聞いて、上手に“集まり”ができたらいいのかなと思います。
集まりは楽しいあそび
ポイント
“楽しさ・安心・信頼関係”をつくり、その先の活動につなげていく
集まりでは手あそびや歌、紙芝居や絵本、パネルシアター、パペットなど、色々なことを子どもたちと楽しみますよね。
子どもたちにとっては楽しいあそびであり、安心して過ごせる時間だと思います。
そして、その日々の積み重ねが4・5歳児クラスの“集まり”につながっているのです。
具体的に言えば、担任の話を聞いて自分たちの身の回りのことを考えたり、クラスみんなで意見を出して話し合うことなどです。
4・5歳児クラスで年中・年長らしい姿を育てるためには、
乳児から3歳児クラスの間に“集まりは楽しいもの”と子どもたちが学び、“集まり”への意欲を育むことがとても大切だと思います。
そのためにも、“集まり”での楽しいあそびは不可欠です。
では、そのあそびをみなさんはどうやって選んでいるでしょうか?
言うまでもないことでしょうが、念のため言葉にしてみると、
① 子どもが理解できるものか?(発達に合っているか)
② 子どもにふさわしいものか?(保護者に見せられるか)
③ ねらいがあるか?(誰かに説明できるか)
ということかなと思います。
ここで“ねらい”という言葉が出てきたので、そこも整理してみました。
【子どもにとってのねらい】
・“見る、聞く、話す、歌う、感じる、考える、手や体を動かす”などを楽しめる
・楽しいから気持ちが切り換えられる
・安心した気持ちになり、ホッとひと息つくことができる
・“集まりは楽しいもの”と思える
【保育者にとってのねらい】
・様々なねらいを持たせたあそびを経験させられる
・楽しい時間を子どもと共有し、関係を深められる
・子どもに“集まりは楽しいもの”と思ってもらえる
集まりでやっている手あそびなどは、実は幼児クラスやその先の就学にまでつながっているのです。
普段はなかなかイメージしづらいことかもしれませんが、私たちがやっていることのゴールを知っていれば、子どもを見る視点や保育そのものが変わっていきます。
そのような意味も含めて、“集まり”を見直すことは必要だと思います。
集まりで見通しを持つ
ポイント
見通しを持てるから“主体性”が生まれる
どの年齢のクラスでも、集まりをすればその日の予定を伝えているのではないでしょうか?
(1~2歳児クラスでも「じゃあお庭であそぼうね」などと話しますよね)
みなさんが何気なくやっている予定のお知らせ。
これが子どもの主体性を引き出すために必要なことなのです。
それは、先の見通しを持てて初めて、子どもたちは自分からやりたいことを考えられるからです。
たとえば、「これからお散歩に行くよ」と子どもたちに伝えると、
「今日は散歩なんだな、わかったぞ」と安心する
「じゃあ、○○くんと手をつなぎたいな」と楽しみにする
「先生、○○公園にいこうよ!」と自分で考えて意見を言う
などと考えたり、感じたりするのではないでしょうか。
見通しを持てれば、子どもたちは自然と主体的に考えることができます。
もう少し具体的に言うならば、子どもたちは今と、ちょっと先の予定がわかれば、「じゃあどうやってやろうかな?」と考えることができるのです。
“集まり”で今日の予定や少し先のことを伝えることで、子どもたちに見通しを持たせる。
そこから子どもたちの考えや思いが広がるので、保育者がそれをくみ取っていく。
そして、どのような物的・人的環境を準備したらいいのか考えていく。
そのような流れの繰り返しが、子ども主体の保育につながっていくのではないでしょうか。
集まりは就学に向けた練習
集まりは“聞く・話す・考える”を練習する時間
保育園生活の目的地(ゴール)は小学校。
小学校とは“聞く・話す・考える”という力をつかって、子どもたちが自分で勉強をするところです。
だから、保育園の、特に幼児クラスでは、子どもたちが“聞く・話す・考える”という経験を楽しみながら積み重ねられる工夫が必要なのです。
そして、それを1番練習できるのが毎日の集まりです。
具体的にいえば、
【聞く】
・イスに座って担任の話を聞く(聞く練習)
・目を見て、おへそを向けて、背筋を伸ばして聞く(姿勢)
・聞くときはおしゃべりをしない(ルール)
・友だちの意見を聞く(共感・発見・学び)
【話す】
・集まりで自分の気持ちや考えを言う(話す練習)
・手をあげて、当てられたら発言する(ルール)
【考える】
・担任の投げかけにより、みんなで意見を出して考える(担任と子ども)
・グループなどで話し合う(子ども同士)
という感じでしょうか。
何か特別なことをしなくても、上記のようなポイントを押さえて幼児クラスの集まりを行えば、自然と“聞く・話す・考える”という力は育っていくと思います。
ただ、これらはいきなりすぐにできるわけではないですし、“ルールだから”と無理やりやらせても、子どもの育ちにはつながりません。
大切なのは、これらのねらいを持たせた活動が、
① 子どもにとって“あそび”になっている
② 子どもにとって“必要性”がある
③ 子どもの“困った”を解決できる
という条件を満たしているかどうかだと思います。
この条件を満たす活動を考えて、日々積み重ねて行くことが“主体性を引き出す環境づくり”なのではないでしょうか。
まとめ
集まりの4つの意味
① 活動の切り替え
② 楽しいあそび(紙芝居・絵本・手あそび・歌など)
③ その日の予定を知り、見通しを持って生活する
④ “聞く・話す・考える”の練習
0歳児クラスから5歳児クラスまでまんべんなく持ち、ここ数年で持った幼児クラスの経験から、“集まりの意味”を以上のようにまとめました。
乳児クラスでは集まりでたくさん遊び、“集まりは楽しいな”“先生の話を聞くと面白いな”と感じてもらう。
幼児クラスではあそびもやりつつ、“聞く・話す・考える”を経験できるような取り組みを行い、先の予定を伝えることで子どもたちに見通しを持たせる。
そして、就学という大きな視点を持ちながらもあせらずに、その日その時を子どもたちと楽しみ、経験を積み重ねていくことが大切なのではないかと思います。